Bacillus thuringiensisは胞子形成時にCryタンパク質を産生する。Cryタンパク質はその種類によって鱗翅目、双翅目、鞘翅目昆虫などに対して殺虫活性を示す。そのため、微生物殺虫剤として広く用いられている。コガネムシ類の幼虫に対してはCry8が殺虫活性を示すことが知られている。しかし当研究室で得られたCry8Dはマメコガネの幼虫だけでなく成虫に対しても殺虫活性を示すことが明らかとなった。コガネムシ類の幼虫は地中に生息しているため防除が難しいため、成虫に対する防除もあわせて行うことで効果的な防除が可能となると考えられる。本研究ではCry8Dの殺虫活性機構解明による新たな殺成虫活性を示すCryトキシンの作出を目的として研究を行い以下の成果を得た。Cry8Dはマメコガネ幼虫および成虫消化液によって64kDaさらにα3-helixとα4-helixの間のループで切断され54kDaの断片が生じること明らかにした。また、消化液処理後のCry8Dをゲル濾過クロマトグラフィーで精製した結果、64kDaおよび54kDaだけではなく約8kDaの断片が同一の画分に共溶出された。N末端アミノ酸配列解析を行った結果、8kDaはCry8Dのα1~α3-helixに相当することが明らかとなった。よって、54kDaと8kDaはヘテロダイマーを形成していると考えられる。また、Cry8Dとマメコガネ幼虫および成虫のBBMVとの結合を解析した結果、54kDa断片のみがBBMVと結合することが明らかとなった。また、トキシンオーバーレイアッセイを行った結果、Cry8Dは幼虫、成虫で異なるレセプターと結合することが明らかとなった。これらのことからα3-helixとα4-helixの間のループ構造を改変し切断されやすくすることで殺虫活性の向上が見込まれる。また、Cry8Dのレセプターと結合する構造を他のCry8トキシンに導入することで新たな殺成虫活性を示すCry8トキシンを作出できると考えられる。
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