研究課題
本研究では,波形インバージョンによって盆地内の観測地震動を再現することのできる堆積盆地内速度構造モデルを構築することを目的とする.平成20年度は精度の良い初期モデルが得られている大阪堆積盆地をテストフィールドとし,手法の開発と実データへの適用を試みた.盆地基盤面形状を表すモデルパラメータの関数として理論波形を表し,観測波形を最もよく再現するモデルを最小二乗法により推定する.その際,基盤面を表す基底関数であるB-spline関数のノードを解くべきモデルパラメータとする.少ない数のノードで表現できるspline関数を基底関数として用いているためJacobeanの計算が比較的少なくて済むことに加え,基盤形状が空間的になめらかに変化することも利点である.数値実験によって手法の妥当性を確認したのち,実記録への適用を試みた.実体波部分と後続波部分の空間的分解能の違いに着目して,2種類のタイムウィンドウを用いた段層的な解析を行った.波形は周期3-10秒を解析の対象とした.合計12回の反復を経て得られた更新モデルら計算される理論波形は,ほとんどの観測点において観測波形との適合性が改善した.更新モデルの妥当性を調べる一つの手立てとして,ボーリング地点における基盤深度のデータと更新モデル,初期モデルの基盤深度を比較したところ,多くのボーリング地点において更新モデルの方がデータとの差異が小さくなった.本研究のように堆積盆地基盤面形状を波形から直接推定する手法を現実の盆地と実データに適用した例は過去になく,意義が大きい.以上の研究成果は進捗状況に合わせて国内外の学会で発表したほか,現在論文を投稿準備中である.またこの研究の動機付けとなる,大阪堆積盆地の地震動特性に関する実記録の解析と堆積盆地モデルとの関係に関する研究を論文にまとめたものが,今年度査読付き国際学術誌に掲載された.
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
Geophysical Journal International
Joint Conf. Proc. 7th Int. Conf. on Urban Earthquake Engineering & 5th Int. Conf. on Earthquake Engineering
ページ: 157-161