研究概要 |
本研究では多重格子輻射磁気流体計算コードを用い、星形成過程、特に初期に形成されるファーストコアついて研究を行っている。ファーストコアは寿命2,3000年程度の短寿命な過渡的天体だが、円盤形成やその分裂、磁場による双極分子流の駆動など様々な現象の舞台であり、星形成を理解する上で重要である。この天体は短寿命かつ暗いため未だ同定されていないが、最近幾つかの候補天体が報告されておりALMAのターゲットとして注目されている。 このような現状に合わせ、本研究では観測と直接比較できる理論モデルを構築してきた。シミュレーション結果に輻射輸送計算を行い、ファーストコアのSpectral Energy DistributionやVisibility Amplitude Distribution (輻射強度分布のフーリエ成分に対応し、中心集中度等の内部構造の情報が得られる。電波干渉計の観測量)を予測することでファーストコア観測の戦略を提案した。また国立天文台野辺山のグループと協力して、実際に観測されている候補天体と比較した。その結果、星形成領域中にファーストコア候補として有力な天体を複数見出した。 これまでの先行研究は主に太陽程度の質量が対象とされてきた。しかし「初期条件」である分子雲コアや星の質量分布関数を見ると低質量のものが多数存在する。また、ファーストコア候補天体には0.1太陽質量程度と非常に低質量のものが存在する。そこで、0.1太陽質量程度の分子雲コアの重力収縮過程の輻射流体計算を行い、低質量な分子雲コアでは全てのガスが降着してもファーストコアは崩壊せず、輻射冷却の影響を受けて定性的に異なる進化をすること、降着率が低いためにゆっくりと進化し1万年以上の寿命を持つことを見出した。更にその観測的性質を調べ、ALMAやHerschel等によって十分観測・同定できることを示した。この結果はこれまでの予測よりも多数のファーストコアが存在し観測される可能性があることを示唆する。
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