研究概要 |
本研究の目的は,非等方多孔質体理論を用いて,複雑なバイオ伝熱系を取り扱い得る一般的解析手法を確立することにある.まず,非等方性多孔質体理論における解析手法を確立するための基礎研究として,多重構造多孔質体の透過率と機械的分散効果を考えた.多重構造多孔質体は異なるスケールを有する構造体であり,一般性と有用性を兼ね備えた透過率モデル(A General Formula for Determing the Permeability of Porous Media Consisting of Obstacles of Different Sizes, Physical and Numerical Simulation of Geotechnical Engineering, Nakayama A, Liu R, Sano Y, Haung X, Vol. 1, pp : 3-8, 2010)を提案した.機械的分散は多孔質体を通る流体の混合作用により生じる伝熱促進効果であり,機械的分散の解明はバイオ工学のみならず工学分野において大きく貢献できる.機械的分散と界面熱伝達率が逆比例の関係に在ることを解析的に証明した.(HEAT TRANSFER ENHANCEMENT IN CROSS-FLOW HEAT EXCHANGERS RESULTING FROM THERMAL DISPERSION, ICPM3, June 20-25, 2010)また,機械的分散の伝熱面に注目した機械的分散における壁効果(A novel way of determining the dispersion conductivity in flow in a porous medium, JSSUME 2010, August 26-28, 2010)を解明した.この研究はDistinguished Achievement Award (JSSUME 2010 Symposium Committee, August 27, 2010)を受賞した. 次に,複雑なバイオ伝熱系して生体組織を考えた.温熱療法の治療精度の向上を念頭に置き,生体組織を非等方性多孔質体として捉え,動静脈の対向流,及び,血液から組織への灌流の伝熱機構を考慮に入れた生体伝熱式(A rigorous derivation of the bioheat equation for local tissue heat transfer based on a volume averaging theory, Heat and Mass Transfer, Nakayama A, Sano Y, Yoshikawa K, Vol. 46, pp. 739-746, 2010)を提案した.さらに,人工透析における物質移動に焦点を当てた.現在,我が国においての人工透析を受けている患者数は27万人を超えており,人工透析における物質移動の物理モデルの構築することは日本の医療のさらなる発展に貢献できるものと確信する.人工透析器を非等方多孔質体として捉え,人工透析における物理モデルを確立した.(多孔質理論に基づく人工透析器の数学モデルとその検証,第17回 伝熱コロキウム,2010年12月3日)
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