研究概要 |
今年度前半は,微生物の検出法(FISH法)と代謝評価法(微小電極)の技術を確立するために基礎実験を集中的に行った.FISH法については実験設備や薬品などを新たに整え,微生物検出実験の体制を確立した.微小電極については,pH・Eh・Ca^<2+>・CO_3^<2->測定用電極及び参照電極の作成法を確立した.その後,岡山県新見市と愛媛県西予市の淡水成ストロマトライト堆積場において,上記手法を用いた調査を行った.その結果,調査対象となったストロマトライトは光合成細菌の活動によって形成されていることが明らかになった.この発見は,地質時代のストロマトライト形成にも光合成が重要な役割を果たしていた可能性があることを示している.この成果を論文としてまとめ,Geochimica et Cosmochimica Acta誌に投稿した. 年度後半からは温泉堆積物の研究を開始した.まず,鹿児島県薩摩硫黄島赤湯温泉において鉄堆積物の調査を行った.しかしながらこの堆積物を取り巻く状況が,記載の行われた10年前に比べて大きく変化していることから,本研究の対象としては不適であると判断した.次に大分県竹田市長湯温泉のストロマトライトの調査を行った.その結果,この温泉成ストロマトライトも淡水成のものと同様に光合成によって炭酸塩の沈殿が誘導されていることが示されたが,一方で無機沈殿も相当量起きていることが明らかになった.このような高いバックグラウンドの無機沈殿は先カンブリア紀の海洋環境と類似していることから,この温泉成ストロマトライトは非常に興味深い研究対象であることが明らかになった.これらの調査に加え,本研究課題の実施に適した堆積物の探索も行った.これにより,鹿児島県塩浸温泉・島根県木部谷温泉・島根県三瓶温泉などで新たにストロマトライト状堆積物を見出した.
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