LSIの微細化によりCu配線幅が100nm以下になると、配線幅の減少に伴って著しく電気抵抗が上昇することが問題となっている。電気抵抗上昇の主な原因は、Cu配線とその周囲に存在する絶縁膜との相互拡散を防止するための拡散バリア層がCu配線の有効断面積を減少させてしまうことである。そこで私は、Cu(Ti)合金薄膜を高温で熱処理するとTiが薄膜の表界面に析出する「薄膜の表皮効果」を応用し、Cuと絶縁膜との界面に極薄バリア層を自己形成させるプロセスを検討してきた。自己形成バリア層は合金膜中のTiと絶縁膜との化学反応によって形成され、バリア層の極薄化によってCu配線の大幅な低抵抗化が期待される。本年度の研究では、この反応を定量的・系統的に評価し、律速機構を明らかにすることで、バリア層自己形成機構を解明することを目的とした。RBS法を用いて絶縁膜と反応したTiの量を定量的に求め、熱処理条件を変えて系統的に実験を行った結果、Tiと絶縁膜の反応の時間依存性、活性化エネルギー、反応速度定数をそれぞれ求めることができた。これらの値から、バリア層中の反応生成物の種類にかかわらず、バリア層自己形成はTiと絶縁膜の反応律速であることがわかり、特に絶縁膜中のC組成によって反応速度が大きく変化することが明らかとなった。これらの知見に基づき、LSI作製プロセスにおけるバリア層自己形成反応の定量的な予測ができることを提唱した。一方、このバリア層自己形成法を応用して、Cuと絶縁膜の密着力を向上させる研究も行った。本年度の研究では、熱処理後の複雑な界面への足掛かりとして、熱処理前のCu(Ti)合金と絶縁膜の界面の密着力測定法を確立することを目的とした。試料加工条件と試験条件を変化させて実験を行った結果、絶縁膜の種類によらず熱処理前のCu(Ti)合金と絶縁膜の密着力を4点曲げ試験法により測定できるようになった。
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