本研究は、「合法性」を確保した性風俗世界の分析を通じて現代日本の都市的"性"様式のあり方を明らかにすることを目標にしている。これを達成するため、平成21年度は、性風俗世界に関与する人々(性労働者、客、男性従業者、オーナー、担当税理士、所轄警察署職員など)の視点から、性風俗世界の現実を明らかにする作業を重点的に行った。具体的には、定期的に(週2日のペース)実施した東京都市部の性風俗店における参与観察及び上記関係者への聞き取りである。 その成果の一部は、論文(2本)や口頭発表等(4件)として平成21年度中に提出された。その中では、臨地調査から得た知見及びその分析結果を性労働に関する先行研究の流れに位置付けたうえで、性労働者が自らの実践や自己について抱く認識や、都市部に生きる女性たちの実態について、新たな側面から理解を行う可能性が実証的に提示された。また、平成21年度中には、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(「風営法」)」の言説分析も併せて実施した。これは、今後も引き続き行われる性風俗世界の関係者による聞き取りの成果と併せて、検討の俎上に乗せられる。それにより、これまでは違法性や犯罪との関連から扱われることの多かった性風俗世界について、「合法性」という新しい角度から議論することが可能になる。更に、平成21年度には、本研究の柱である臨地調査の成果そのものに関する正当性をより強固にするため、臨地調査における倫理的問題の検討にも着手した。
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