研究課題
平成22年度は、昨年度の試作1チップセンサノードSoC性能評価によって判明した無線機アーキテクチャの課題に対する研究と、アプリケーション層まで含んだセンサネットワークの垂直統合設計研究をおこなった。まず、無線機アーキテクチャについては、昨年度試作で問題となったオーバーヒアリングによる受信機電力増大という問題の対策として、コグニティブ無線に着目した。コグニティブ無線とは、割り当てられた周波数帯域をセンシングし、使われていない「周波数」や「無線通信規格」、「時間帯」などを利用することで周波数利用効率を高める無線システムである。これをセンサネットワークに組み合わせることで、オーバーヒアリングや衝突、競合などを削減できる。特に、コグニティブ無線に必要となるスペクトラムセンシングに着目し、先端CMOSプロセスと親和性の高いデジタル回路技術によるスペクトラムセンシング技術を提案した。また、センサネットワークの新たな応用分野としてマイクアレイを用いる音声インターフェースに着目し、従来の大規模マイクアレイにおける演算量や消費電力の問題を解決する技術として、センサネットワーク技術を用いたネットワーク型マイクアレイシステムを提案した。提案システムでは、小規模なマイクアレイ・センサノード(サブアレイ)を多数配置し、それらの間で有線ネットワークを構築して協調動作をおこなうことで、大規模なマイクアレイ音声処理システムを実現する。従来のデータ収集のみを目的としたアプリケーションとは異なり、ネットワーク型マイクアレイシステムには「リアルタイム処理」、「センサノード間の時刻同期」、「ネットワーク分散処理」という3つの機能が必要であった。これらの機能は、他のより実用的なアプリケーションでも必須となるものであり、本研究はセンサネットワークの応用分野を拡大するためのテストベッドとしての役割も果たすものである。
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Journal of Information Processing Society of Japan (IPSJ)
巻: vol.19 ページ: 129-140
http://www28.cs.kobe-u.ac.jp/~shin/