研究概要 |
平成22年度は、偏微分方程式系を代数方程式系に単純化するという、まったく新しい手法を用いて、金星大気のスーパーローテーションの維持メカニズムに関する理論的研究を行った。通常、大気をはじめとする流体の運動は無限自由度の偏微分方程式系で記述される。このような偏微分方程式系は一般に、計算機(コンピューター)を用いた大規模数値計算により数値解を得ることでしか、解の振る舞いを知ることは出来ない。そこで、私は偏微分方程式系の未知関数(f(x,y,t)などの形で表される)を、その代表的な大きさを表す未知変数(Fなどのスカラーで表される)で置き換えて、いくつかの物理的な仮定を置くことで、4元の代数方程式系を導いた。この代数方程式系を考察し、解析的に解くことで、スーパーローテーションの維持メカニズムに関する新たな理論モデルを構築し、解の振る舞いや物理的意味を明らかにした。また、偏微分方程式系の大規模数値計算により得た数値解と比較することで、理論モデルの妥当性も検証した。 平成22年度は惑星大気の流れ(大循環)の中でも、金星や土星の衛星タイタンで見られるスーパーローテーションという、大気が地面の何倍もの速さで回転する現象のメカニズムを、偏微分方程式系を代数方程式系に単純化するという手法で研究した。今後は、この手法を用いて、他の惑星の大気大循環のメカニズムを研究することで、惑星大気の大循環の諸相を統一的に理解するための理論モデルを構築したいと考えている。
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