研究課題
本研究では、緑色渦鞭毛藻類Lepidodinium chlorophorumが持つ、共生藻退化核であるヌクレオモルフ(Nm)の探索を行っている。Lepidodinium葉緑体周辺区画内には、2重膜に囲まれ、穴の空いた構造体が電子顕微鏡観察により確認されている。葉緑体周辺区画は共生緑藻のかつての細胞質に相当し、そこに存在する2重膜構造体は退化・縮小した緑藻核、すなわちNmではないかと考えられている。しかし、Nm様構造体は、電子顕微鏡写真により確認されているだけで、DNAの存在は未知である。本研究では、EST解析を行い、ヌクレオモルフゲノムの構造を決定する。そして、クリプト藻類、クロララクニオン藻類が持つヌクレオモルフゲノム構造と比較することにより、真核共生体核ゲノムの縮退過程の解明を目的とする。H21年度では、L.chlorophorumより、ヌクレオモルフにコードされていると考えられる小サブユニットrRNA(SSU)、大サブユニットrRNA(LSU)配列をPCRにより獲得した(SSU-NM, LSU-NM)。LSU rRNAデータによる解析では、LSU-NM配列はcore chlorophytesと呼ばれる緑藻類の配列と近縁となった。私がH21年度に行った11葉緑体遺伝子を用いた系統解析(Protistに投稿中)により、L.chlorophorum葉緑体はcore chlorophytesに属する生物種由来であることが分かっており、2つの解析結果は互いに一致している。このLSU-NMは、葉緑体の起源となった緑色植物の退化した核、すなわちNmにコードされていると考えることができる。すでに、H21年度に得たLSU-NM配列をもとにin situハイブリダイゼーションに用いるプローブを作成した。今後このプローブを用いて、今後in situハイブリダイゼーションを行い、細胞内のNmを確認する。
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