研究課題
本研究では「群れで生活する他の霊長類と比べて、より遠くにいる他個体のおかれた状況や他個体の意図を理解する為に、オランウータンは高い認知能力を用いている」という申請者が着想した新たな仮説を検証することが目的である。昨年度から本年度5月までは出産育児の為に採用を中断したので、本年度が実質1年目にあたる。研究再開後、7月にインドネシアで開催された国際ワークショップで発表し、9月に京都で開催された国際霊長類学会で発表を行い、共同研究者らと打ち合わせを行った。年度後半には共同研究者と共著論文を執筆すると共に、非果実季(平成22年10月~11月および平成23年1~2月)に計28日間マレーシアに渡航し、マレーシア国サバ州のダナムバレー森林保護区において、フィールドワークに従事した。フィールドワークは、4名の調査補助者と研究者で2組の追跡チームを編成し、熱帯雨林の中で野生のオランウータン2個体を同時に追跡するという手法を用いた。これにより、(1)オランウータンは他個体から何m離れた場所で、その個体に接近するかしないか、を決めるのか、(2)他個体に接近するかしないかを決定する生態学的、社会的要因は何か、を明らかにするための、行動観察の記録とGPSデータを収集した。またオランウータンの行動に影響を与える生態学的な要因として、地域の果実生産量を調べるために、落下果実を拾って結実した木の本数と種類を定量的に測定する「落下果実センサス」を調査補助者が毎月行い、資料を収集した。今まで使用していたGPSとビデオカメラが故障した為に、今年度新たに1台づつ購入した。また本調査の資料収集は、2個体を同時に追跡するという方法をとるため、申請者単独では不可能である。この為、現地にて訓練された調査補助者が最低でも4人必要なので、謝金を支払って雇用した。
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Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: (In print)
American Society of Parasitologists
巻: 96 ページ: 954-960
American Journal of Primatology
巻: 72 ページ: 820-840