研究概要 |
本研究では、実用的なセンサの構成材料となり得る新規物質(固体電解質および検出補助極)を理論及び実験の両面から、その基礎物性を決定する構造的因子を明らかにした上で実用的な固体電解質型センサの開発を目指した。 平成21年度は優れたNH_3検出特性を有するセンサの開発を目指し、Al^<3+>イオン伝導体((Al_<0.2>Zr_<0.8>)_<20/19>Nb(PO_4)_3)に検出補助極として希土類硫酸塩・硫酸アンモニウム複塩R_2(SO_4)_3・(NH_4)_2SO_4(R=Pr, Nd)を組み合わせたセンサを作製し、そのNH_3検出特性を評価した。熱分析、IR、ラマン及び導電率測定によりR_2(SO_4)_3・(NH_4)_2SO_4の基礎物性を詳細に調べた結果、無水物の状態で、かつNH_3検出に必要なNH_<4+>イオンが存在する温度領域は200~250℃であることがわかった。センサの作動温度は長期安定性の観点から上限温度(250℃)より低い230℃とし、NH_3濃度を25-500ppmで変化させたところ、本センサはNH_3濃度を精度よく検知できることが明らかとなった。また、本センサは測定開始から半年以上経過した後もNH_3濃度を測定可能であり、長期安定性に優れるセンサであることがわかった。 さらに、R_2(SO_4)_3・(NH_4)_2SO_4の熱分解挙動は、熱分析のみを用いてその温度を調べた既報の文献値とは大きく異なることを見出した。 これら平成21年度の結果により、無水物を形成することで水蒸気の影響を排除でき、熱安定性が高い希土類硫酸塩・硫酸アンモニウム複塩R_2(SO_4)_3・(NH_4)_2SO_4を検出補助極に用いることで長期間精度よくNH_3濃度を計測できるNH_3センサの開発に成功した。
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