研究概要 |
1.レーザー誘起赤熱法によるすすの体積分率の二次元分布と,レーザー誘起蛍光法による多環芳香族炭化水素(PAH)の二次元分布の計測を同時に適用することで,すすとPAHの生成領域を非接触で可視化し,逆拡散火炎近傍のすすの体積分率が低下すると,すすによるPAHの捕捉が緩慢になることを明らかにした. 2.反応領域の下流が高温の燃料雰囲気となる部分燃焼方式のガス改質器においてすすの生成を制御するためには火炎帯での化学反応を制御する必要があると考えて,酸化剤中にすすの前駆物質であるPAHの重合反応において重要な因子となる水素を添加した.その結果,酸化剤への水素添加が微量(発生炉ガスの発熱量基準で0.5%)であっても,高分子量のPAHやすすに代表される炭素含有成分の低減に対して効果があり,主に一酸化炭素が増加したことにより炭素転換率が大きく向上することを明らかにした. 3.逆拡散火炎の火炎帯における化学反応は物質拡散の影響を受けることから,火炎帯中の活性化学種(ラジカル)のモル分率の空間分布を考慮できる対向流拡散火炎モデルを用いた反応動力学計算を適用して,酸化剤への水素添加の影響を火炎帯における化学反応の観点から考察した.158化学種872素反応式から成る気相反応機構によってタールの重合挙動を解析し,酸化剤への水素添加によってPAHの重合反応が抑制された結果,タールからすすへの成長が抑制されることを明らかにした. 4.部分燃焼過程において形成される逆拡散火炎の火炎形態及び火炎帯における化学反応素過程における変化が,タールを起源とする多環芳香族炭化水素(PAH)の重合と,すすの生成挙動に影響を及ぼすことが明らかとなり,不可逆性を伴って進行する非平衡な素反応の起こる火炎帯において燃焼形態及び化学反応素過程を適切に制御することがガス改質器内におけるすす生成の抑制及び制御につながると言える.
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