研究課題であるインドネシア残留日本兵の社会史を東南アジア史のなかで論じるためには、インドネシア側の視点を詳述することが不可欠である。とくに今年度は日本学術振興会研究者海外派遣基金第2回優秀若手研究者海外派遣事業により1年間にわたりガジャマダ大学文化科学学部歴史学科に派遣される機会を得たことを活かして、残留元日本兵の暮らす集落で定着調査を行い、残留元日本兵の個人史から、一つの村の社会史を紡ぎ出すことを目指した。 具体的には1950年から2010年までの60年間におよぶ東部ジャワ農村の変容を、1965年から66年にかけて発生した住民虐殺事件を一つのターニングポイントとして解明することを試みた。なお、現地調査に際しては、インドネシア研究技術省(RISTEK)の調査許可を得るとともに、現地側の受入研究者であるガジャマダ大学文化科学学部歴史学専攻のバンバン・プルワント教授の指導を仰ぎ、インドネシア、オランダ、オーストラリア、アメリカの研究者との学術的な交流を深めた。一例としては、第3回イェール・インドネシア国際フォーラム:学際会議(イェール大学、ディポヌゴロ大学社会政治学部共催)「社会的正義と法の支配:インドネシアにおける多元的民主主義の発展」において研究報告を行った。
|