本研究では電場印加により異方性を生じる液晶分子を用い、電場を印加することにより開閉制御可能な分子扉を有する電場応答性メソポーラスシリカの合成を行い、ドラッグデリバリーシステム材料としての応用を検討した。 1)液晶分子固定化メソポーラスシリカの合成 まず、化学合成手法により代表的な液晶分子に分子構造が近い4-シアノフェニル 4-フォルミルベンゾェイトを合成し、4-アミノプロピルトリメトキシシランをシランカップリング剤に用いる表面修飾法により、擬液晶分子をメソポーラスシリカ表面に固定化した。XRD、N_2吸脱着測定により2-4nmの細孔径を有するメソポーラスシリカ構造が、IR測定により固定化した分子の存在が確認された。 2)キャリア分子の内包 モデル分子として医療用解熱剤にも含有されるイブプロフェンを用いた。イブプロフェンを含むヘキサン溶液中に1)で合成したメソポーラスシリカを浸漬することでイブプロフェンを充填した。熱分析測定の結果、擬液晶分子を固定化したメソポーラスシリカ内にイブプロフェンが内包されていることが確かめられた。 3)電場印加によるドラッグ放出速度の制御と電場応答性の確認 生体溶液にイオン濃度が近い擬似体液中、37℃において0~1kVの電圧を印加することにより、内包させたイブプロフェンの放出速度の制御を試みた。ドラッグ分子の内包量が少なかったこと、液晶分子の電場応答性が電極間距離や液晶分子の修飾密度に大きく依存するなどの物理的問題があり、電場応答性の有無については現在更なる試験を行い、確認を行っている段階である。 電場印加のオン・オフにより内包分子の放出速度を人為的に制御することができれば、医療分野でのドラッグデリバリーシステムだけでなく、ナノテクノロジーやファインケミカル分野でもキャリアホストとしての応用が期待できる。
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