本研究では電場印加により異方性を生じる液晶分子を用い、電場を印加することにより開閉制御可能な分子扉を有する電場応答性メソポーラスシリカの合成を行い、ドラッグデリバリーシステム材料としての応用を検討した。 具体的には、表面修飾法により液晶分子を模擬した有機分子をメソポーラスシリカ表面に固定化した。合成したメソポーラスシリカにイブプロフェンを充填した後、擬似体液中、37℃において0~1kVの電圧を印加することにより、内包させたイブプロフェンの放出速度の制御を試みた。電場応答性の有無については、有機基や修飾方法の変更を行い、現在確認を行っている段階である。電場印加のオン・オフにより内包分子の放出速度を人為的に制御することができれば、医療分野でのドラッグデリバリーシステムだけでなく、ナノテクノロジーやファインケミカル分野でもキャリアホストとしての応用が期待できる。 これに関連して、高効率固体触媒系の構築を目的とし、ユニークな表面機能性を有するポーラスシリカ材料の創成も実施してきた。TS-1と呼ばれるマイクロポーラスチタノシリケート材料の表面に、イオン交換手法によりアルカリカチオン種を取り付けたところ、過酸化水素を酸化剤としたオレフィンの酸化反応における触媒活性が飛躍的に向上することが確かめられた。分光法を用いた構造分析、分子軌道論的な考察、コンピュータシュミレーションから、本反応におけるカチオン-ゲスト分子間相互作用の優位性が裏付けられた。 ナノポーラス材料の表面構造を精密制御することで、細孔内部での特定の物質の拡散や放出(反応)速度を制御できることができ、これらの研究成果はナノマテリアルをボトムアップ的に構築していく上での重要な知見になるものと思われる。
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