研究概要 |
一般に,幹細胞はgrowth conditionにおいて,種々の未分化マーカーの発現が確認される.そこで,MYCNトランスジェニックマウスの神経芽腫腫瘍組織から初代培養したtumor sphereについて未分化マーカー(Oct3/4,SOX-2,Nanog等)の発現を免疫蛍光染色あるいはRT-PCR法を用いて解析した.その結果,典型的な未分化マーカーの発現プロファイルの確認ができた.また,tumor sphereと神経幹細胞(野生型マウスのE14から初代培養した細胞)の未分化マーカーの発現プロファイルについてreal-time RT-PCR法を用いて比較した結果,複数の遺伝子の発現量に有意な差が認められた. 癌幹細胞と称される細胞は腫瘍原生を有していることが種々の固形癌で報告されている.そこで,tumor sphereの腫瘍原生を評価するために,tumor sphereを腎臓の皮膜下あるいは皮下に移植した際に腫瘍が形成されるかどうかを調べた.その結果,ヌードマウス,野生型問わず腫瘍を形成することをH&E染色を用いた組織染色により確認した.このことからtumor sphereが腫瘍原生を有していることがわかった. オリジナルの腫瘍組織とtumor sphereについてマイクロアレイを用いて比較したところ,gain,lossともに40個ほどの候補遺伝子を絞り込んでいる.絞り込んだ候補遺伝子には,既知の神経芽腫関連遺伝子もいくつか含まれている一方で全く報告のない遺伝子も多数含まれていた.現在,これらの遺伝子について解析すべく過剰発現ベクターの作製やノックダウンのためのsiRNA,shRNAのデザインに取り組んでいる.
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