申請者はこれまで、LRRK1がEGF刺激依存的にチロシンリン酸化されていることを見出していた。その後の解析から、LRRK1の944番目のチロシン残基(Y944)が活性化したEGFRによってリン酸化されること、またY944のリン酸化はLRRK1のキナーゼ活性を抑制することが分かった。さらに、EGFRによってリン酸化されない非リン酸化型LRRK1変異体(LRRK1-Y944F)ではキナーゼ活性が恒常的に上昇していた。このLRRK1-Y944Fを発現した細胞では、微小管上の輸送が過剰に促進された結果、EGFRの細胞内トラフィックが異常になることが分かった。以上の結果から、EGFRによるLRRK1のキナーゼ活性制御が、EGFRの適切な細胞内トラフィックに必要であることを明らかにした。 また、申請者はLC-MS/MSによるLRRK1結合因子のスクリーニングで、Arf/Rho GAPドメインを持つARAP1を同定していた。ARAP1はEGFR細胞内トラフィックに関係することが報告されているGAP分子である。これまでにLRRK1のキナーゼ活性は、自身のGTPaseドメインによって制御されることが分かっている。そこで申請者はARAP1がLRRK1のGAPとして働き、そのキナーゼ活性を制御するのではないかと考え検討した。ARAP1 siRNAで内在性ARAP1をノックダウンすると、GTP結合型のLRRK1が増加していた。またARAP1をノックダウンした細胞では、LRRK1のキナーゼ活性が上昇し、EGFRの細胞内トラフィックが異常になった。さらにARAP1ノックダウンによるEGFR細胞内トラフィックの異常は、LRRK1のキナーゼ活性に依存していた。これらの結果から、ARAP1がLRRK1のキナーゼ活性制御を介して、EGFR細胞内トラフィックを制御していることが明らかとなった。
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