研究概要 |
宇宙の単位体積あたりの星形成率で優位を占める、高光度赤外線銀河(Luminous InfraRed Galaxies, LIRGs;赤外線光度L_<IR>が太陽光度L〓の10^<11>倍以上)を調べることにより、宇宙の星形成史を明らかにしようとしている。これらの銀河が赤外線で非常に明るいのは、銀河どうしの衝突によって誘発された、塵に埋もれた激しい星形成(スターバースト)や活動銀河核(AGN)があるためだと考えられている。この現象は銀河合体のシミュレーション(e.g.Barnes 2004)等により実現可能だと言われてきた。本研究では、銀河の赤外線光度とその形態の占める割合を比較することにより、銀河相互作用が高光度赤外線銀河の成因になり得ることを観測的にも実証した。また研究代表者の提案により取得された「あかり」の近赤外分光観測データの整約とそれを基にした銀河診断も行った。 更に、本年度は解像度の高いSpitzer赤外線宇宙望遠鏡の撮像観測により、1つの星形成領域だけで巨大銀河に匹敵する赤外線を放射していることが初めてわかった天体について、X線・紫外線・可視光線・赤外線・電波など、多波長に渡り徹底的に調べた。特にこの星形成領域は銀河核には存在せず、その外にありながらも、銀河全体のほとんどの赤外線放射を担っているため、非常に特異なものであることが分かった。中心核外で赤外線放射が強い天体としてアンテナ銀河などが有名であるが、この銀河はアンテナ銀河よりも約10倍も明るい。更に、この領域は紫外線と可視光線領域では全く放射が見られず、塵に深く埋もれていることを明らかにすることが出来た。赤外線のスペクトルでは、PAH分子からの輝線が非常に強く受かっており、この銀河のエネルギー源はスターバーストであることが明らかにされた。この天体に関する論文は、本研究員が筆頭著者として投稿済みである。
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