本研究は浮イネが持つ深水に対する適応性の遺伝子を単離しそのメカニズムを解明することで、どのようにして深水に適応できる水性植物になったかという、植物の環境適応性について解明し、また、東南アジアにおける洪水多発地帯で栽培されている品種の育成に寄与することを目的としている。 これまでに浮イネ性に関するQTL解析が行われた結果、第1、第3及び第12染色体に座乗する3つのQTLが検出され、このうち最も強い効果を示す第12染色体QTLの原因遺伝子を単離した。しかし、第1、第3染色体に座乗するQTLについては原因遺伝子の単離には至っていない。22年度は、これら2つの遺伝子座において高精度連鎖解析を行った。その結果、第1染色体に座乗するQTLの候補領域を約180kbに、第3染色体に座乗するQTLの候補領域を約310kbに絞り込んだ。今後、ポジショナル・クローニングを行い、原因遺伝子の単離を行う。 また、これまでに浮イネ性を制御する第1、第3、第12染色体のQTLを非浮イネ品種に導入した準同質遺伝子系統NIL1-3-12を作出した。NIL1-3-12は深水条件下において作出親である浮イネ品種の約70%の節間伸長を示した。しかし、NIL1-3-12の節間伸長速度は作出親の浮イネ品種と比べて遅いことが明らかとなった。このことから、これまでに検出した3つのQTL以外に深水条件下において急激に節間伸長を誘導する新たな因子が存在していると考えた。しかし、前回のQTL解析では第1、第3、第12染色体以外のQTLは検出されていない。そこで、深水条件下における浮イネ性を制御する新たな因子を検出するために、解析手法を改良して新たにQTL解析を行った。その結果、第2、第4染色体上に新たなQTLを検出した。今後は、準同質遺伝子系統を作出し、新たに検出されたQTLの効果の評価を行う。
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