ロドプシンはG蛋白共役型受容体(GPCR)の1種で、そのうちファミリー1と呼ばれるグループに属する。ファミリー1では細胞質側にD/ERYモチーフと呼ばれる3つのアミノ酸が保存されている。脊椎動物のロドプシンにおいてその最初のグルタミン酸に当たるE134はグルタミンに変異させることで構成的活性化能の上昇をもたらすことや、野生型で見られる外液からのプロトン取り込みが消失することが知られている。このE134がロドプシンの活性状態MetaIIとその前駆体MetaIの平衡のpH依存的な性質を制御する残基であると推定し、網羅的に変異体を作成した。そのMetaI/MetaIIの平衡のpH依存性を測定した結果、134番目の残基をグルタミン酸とアスパラギン酸以外のアミノ酸に置換した場合、特徴的なpH依存性が消失することが判明した。このことから、MetaI/MetaIIのpH依存的な平衡は、134番目の位置にあるカルボキシル基が外液環境とプロトンをやりとりすることで制御されると考えられた。 さらに、ロドプシンの近縁の蛋白質である錐体視物質錐体視物質の活性中間体のpH依存性を解析し、配列を比較することでロドプシンのMetaI/MetaIIの平衡を制御する残基を絞り込む事を試みた。試料としてニワトリ由来緑感受性視物質(ニワトリ緑)、ニワトリ青、ニワトリ紫、サル赤、そしてウシロドプシンを用いて解析を行った。結果、ニワトリ緑、ニワトリ青、ニワトリ紫においてウシロドプシンと同様に脱プロトン化シッフ塩基を持つ活性状態が低pHにおいて安定化されることが観測された。今後これらの蛋白質の配列に共通のアミノ酸を解析することでさらなる研究の進展が得られると考えられる。
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