研究概要 |
本年度は,まず,前年に行った実験のデータの分析を通して,運動の結果(i.e.,ダーツ投郷におけるダーツの飛び方)をイメージしながら運動を実行すると,イメージに合わせて身体の動きが変化することを実証した。例えば,直線的な軌道(実現するには手を素早く振る必要がある)をイメージした時は,山なりの軌道をイメージした時よりも,リリース時の手の速度が増すことなどが認められた。これらは,結果イメージに基づいて運動が計画・実行されることを示す有力な証拠になると考えられる。報告者の知る限り,結果イメージによる身体の動きの変化は過去に報告例がなく,重要な実験結果と思われる。次いで,結果イメージと運動イメージの関係を明らかにするために実験を行ってデータを追加し,結果イメージを生成してから運動を実行する群と,運動イメージを生成してから運動を行う群の比較を行った。両群間の差は検出されず,結果イメージと運動イメージは分かちがたく結びついており,片方のイメージを生成しようとすると,もう一方のイメージも喚起される可能性が示された。また,特別研究員採用期間中に実施した実験に関する英語論文がJournal of Mental Imagery誌に掲載された。同論文では主に,標的の上へ逸れるダーツの飛び方をイメージすると,下へ逸れる飛び方をイメージした場合よりも,着矢点が相対的に高くなるという現象が報告された。これは,先行研究(e.g.,Taylor & Shaw,2002)で唱えられていた,結果イメージが自信(i.e.,自己効力感)を変化させることを通して運動のパフォーマンスに影響を及ぼすという仮説では,説明することができず,結果イメージに基づいて運動が計画・実行されるという仮説を支持する強力な証拠の1つと考えられる。こうした現象の報告例は過去になく,今後,関連領域において極めて重要な知見になると期待される。
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