研究概要 |
今年度の研究目的は、有限生成群ΓのBanach空間Bへの(アフィン)等長作用αに対し、(*)「αが固定点を持つこと」と、(**)「ある定数Cが存在して、ΓからBへの各同変写像において、αによるエネルギーの絶対勾配が、Cとエネルギーの積以上であること」の関係を調べることであった。 まず、より一般に、コンパクト生成群のBusemann非正曲率空間への等長作用に対して、(**)ならば(*)が成り立つことを示した。例えば、CAT(0)空間や狭義凸Banach空間はBusemann非正曲率空間である。 さらに、次を示した。有限生成群Γと「超極限について閉じているBusemann非正曲率空間からなる族N」に対して、「ΓのNの任意の元Mへの任意の等長作用が(*)を満たすこと」と、「ΓのNの任意の元Mへの任意の等長作用が(**)を満たすこと」は同値である。例えば、p>1を固定したとき、すべてのL^p空間からなる族はNの例である。この結果は、井関-近藤・納谷によるCAT(0)空間に対する結果の拡張である。 またp>1とし、λ_pをΓのl^p(Γ)への(左)正則表現として、次を示した。「λ_pを線形部分に持つI^p(Γ)への任意のアフィン等長作用が(*)を満たすこと(つまり、H^1(Γ,λ_p)=0)」と、(***)「Γ上の各p^-ディリクレ関数fの離散p^-ラプラシアンのノルムが、fのノルムのp^-1乗以上であること」は同値である。p=2のとき、(***)はΓ上のディリクレ関数空間における離散ラプラシアンの最小正固有値の存在に相当する。H^1(Γ,λ_2)=0であるがp>>2のときH^1(Γ,λ_p)≠0となる有限生成群Γの存在が知られており、pの値とΓの第1コホモロジーH^1(Γ,λ_p)の消滅の関係は興味を持たれている。そのため、この結果はH^1(Γ,λ_p)=0となるpの値について情報を与える重要な結果である。
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