イネの主要なジテルペン型ファイトアレキシンであるモミラクトン・ファイトカサンの生合成酵素遺伝子はそれぞれゲノム中において遺伝子クラスターを形成していることが知られている。本研究では、これらの遺伝子クラスターの発現制御機構の解明を目指し、モミラクトン生合成酵素遺伝子クラスターの発現制御を行うマスター転写因子であるOsTGAP1に着目して研究を行っている。 本年度は、まずOsTGAP1がモミラクトン以外の生合成酵素遺伝子の発現制御に関与しているか検討を行った。ostgapl変異株・OsTGAP1過剰発現株を用いた発現解析の結果から、OsTGAP1がファイトカサン生合成酵素遺伝子およびジテルペン型ファイトアレキシンの上流の生合成段階であるMEP経路の酵素をコードする遺伝子についても、その発現制御にOsTGAP1が関与することを明らかにした。このことは、OsTGAP1がモミラクトン生合成だけでなく、ジテルペン型ファイトアレキシン生合成全般を制御するマスター転写因子である可能性を示唆するものである。 次に、OsTGAP1によるジテルペン型ファイトアレキシン生合成酵素遺伝子の発現制御機構の詳細を明らかにするため、クロマチン免疫沈降法(ChIP)によりOsTGAP1のゲノム中での結合位置を明らかにすることにした。まず、T7タグ付加OsTGAP1発現株を材料としT7タグ抗体を用いてChIPを行ったが、T7タグ抗体の特異性の問題から、OsTGAP1結合領域のDNAを濃縮することはできなかった。そこで、次にHAタグ抗体を用いてChIPを行うためにHAタグ付加OsTGAP1発現株の作製を行い、HAタグ付加OsTGAP1の発現が確認された株を数ライン得た。今後これらのラインを使ってChIPを行っていく予定である。
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