イネの主要なジテルペン型ファイトアレキシンであるモミラクトン・ファイトカサンの生合成酵素遺伝子はそれぞれゲノム中において遺伝子クラスターを形成していることが知られている。本研究では、これらの遺伝子クラスターの発現制御機構の解明を目指し、ファイトアレキシン生合成酵素遺伝子クラスター全体の発現制御を行う転写因子であるOsTGAP1に着目して研究を行っている。 本年度は、OsTGAP1によるジテルペン型ファイトアレキシン生合成酵素遺伝子の発現制御機構を明らかにする足がかりとするため、クロマチン免疫沈降法(ChIP)によりOsTGAP1の結合領域のDNAを濃縮する実験系の確立を試みた。まずOsTGAP1のN末端側16アミノ酸を抗原として、OsTGAP1特異的抗体の作製を行った。OsTGAP1過剰発現株を材料として、作製したOsTGAP1抗体を用いてChIPを行ったところ、モミラクトン生合成酵素遺伝子の1つであるOsKSL4の上流域に存在するエリシター応答性シスエレメントを含む領域の濃縮が確認できた。この領域にはin vitroでOsTGAP1が結合することが明らかになっており、OsTGAP1の結合領域を濃縮するChIPの実験が確立できたと考えられる。今後はChIP-seq解析により、OsTGAP1の結合領域を網羅的に同定する予定である。 またyeast two-hybrid screeningによるOsTGAP1と相互作用するタンパク質の探索も開始した。OsTGAP1は転写活性化因子であり、酵母体内でも転写活性化能を示したため、核内において相互作用を検出する従来の方法ではスクリーニングを行うことが困難であった。そこで、細胞質において相互作用を検出することが可能な実験系を用いて、スクリーニングを行うこととした。現在までにスクリーニングに用いるcDNAライブラリーの作製を終え、スクリーングを実施中である。
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