申請者は過去3年間を通じて研究課題にあるペリレンビスイミドのJ会合体の構築・内部構造の解明、更にはその機能材料化に取り組んだ。残念ながら、見出したペリレンビスイミド分子の合成が非常に困難であり、内部の構造を詳細に調査できるだけのサンプル量が得られていなかった。しかしながら、これまでに得られた知見を最大限に活かして大量合成が可能な一つの合成経路を確立することに成功し、内部構造の解明および機能材料化を急ピッチで調査中である。 一方昨年度までの研究を通じて、ペリレンビスイミド色素においては元来困難とされてきた「塗布法により薄膜形成が可能な二次元層状構造の創製」、および「最低ゲル化濃度が低く透明なゲル材料の構築」に成功した。これらの系の分子レベルでの集合構造を精査し、光学的・電子的特性、および材料特性との相関を明らかにした。前者に関しては、半導体有機エレクトロニクス材料としての応用展開を見出し、溶液塗布法により作成可能な有機薄膜トランジスターデバイスの活性層への適用に成功した。一方後者の系では、ゲルの分子レベルの配列とよりマクロな層構造との明確な相関関係を解明することに成功した。得られた成果は、機能性の色素分子から望みのゲル材料の形態を構築させるための重要な分子設計指針を与えた。 本研究を通じて、ペリレンビスイミドの機能化を目指した合成の高収率化、分子レベルの集合構造と光学的・電子的特性との相関の解明、有機エレクトロニクス材料としての有用性の証明に成功した。更なる詳細な調査によって、他の色素材料の構築にも適用可能な分子設計指針の確立が期待される。
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