研究概要 |
外力項のついた,多孔質媒質方程式の解のヘルダー連続性とその応用について研究した.多孔質媒質方程式の解は,動く界面を形成することが知られている.そのため,界面の正則性,即ち界面の滑らかさを知るためには,方程式の解の正則性を調べればよい.ところで,多孔質媒質方程式は,拡散係数が消えうる,退化した放物型方程式である.退化した放物型方程式の解は一般に滑らかにならないことが知られている.そこで,正則性を定量に表した,ヘルダー連続性の立場から,外力項の正則性と解の正則性の関係を考察した.とりわけ,応用上の観点から,比較原理を用いずに解の正則性を調べた.先行研究として,外力項が適切な可積分性をみたすときに,解がヘルダー連続となることが指摘されているが証明は与えられていないようである.我々は,この結果より弱い条件の下でも解がヘルダー連続になることを示すとともに,解のヘルダー連続性に関する,定量的な評価を得た.さらに,得られた評は,熱方程式の解に対するよく知られた正則性評価の拡張となっていることがわかった.次に応用として,退化Keller-Segel方程式系の減衰する大域解に対する漸近安定性を考察した.退化Keller-Segel方程式系は,本質的に非局所項を持つ退化した放物型方程式となる.非局所項を持つ放物型方程式は,一般に比較原理が成り立たない.漸近安定性を示すには,解の正則性を示すことが重要であるため,比較原理を用いずに,解の正則性を示す必要がある.我々の正則性価判を用いることで,臨界的非線形性を持つ退化Keller-Segel方程式系の解に対する,保存則をみたす空間上での漸近安定性を得た.さらに,解の収束の速さを陽的に示すことができた.
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