ある種のTRIMファミリーユビキチンリガーゼは、エストロゲン受容体(TRIM25など)、アンドロゲン受容体(TRIM68など)をはじめとした、核内受容体による転写を制御することが知られている。同じく核内受容体スーパーファミリー分子であるPPARγによる転写を制御するTRIMタンパク質を、PPARγ応答配列の下流にホタルルシフェラーゼ遺伝子を組み込んだレポータープラスミドを用いて、PPARγを導入したHeLa細胞にてルシフェラーゼアッセイを行い検索したところ、複数の候補分子を得た。このうち、PPARγシグナルを負に制御するあるTRIMタンパク質に注目し、PPARγシグナルの活性化によって成熟化する脂肪前駆細胞である3T3-L1細胞に安定発現させ分化を誘導すると、対照群に比べ有意に分化が遅延することを見出した。酵母ツーハイブリッド法によりこのTRIMタンパク質の結合分子を網羅的に検索したところ、新規結合分子としてRINGフィンガータンパク質を同定した。ルシフェラーゼアッセイを行い、このRINGタンパク質は既述のTRIMタンパク質と同様にPPARγシグナルを負に制御することがわかった。TRIMファミリーはRING、B-box、Coiled-coilの3つのモチーフ(TRIpartite-Motif)を持つことで特徴づけられるが、このTRIMタンパク質は例外的にRINGを持たず、B-box、Coiled-coilのみを持つ。RINGドメインはユビキチンリガーゼの機能に重要なドメインであるため、このTRIMタンパク質は、ユビキチンリガーゼではないことが示唆される。一方、RINGタンパク質はRINGドメインを持つユビキチンリガーゼであるため、これらTRIMタンパク質とRINGタンパク質はユビキチンリガーゼ複合体として機能する可能性があり、詳細を解析中である。
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