ライナー材の新たな施工手段として、バイオグラウトを用いた地盤修復技術の応用が期待できる。そこで本研究では、日本学術振興会優秀若手研究者海外派遣事業(特別研究員)の助成を受け、2010年3月29日~2011年3月22日の期間、トリニティ大学ダブリン校(アイルランド)およびデルフト工科大学(オランダ)に滞在し、バイオグラウトの基本技術の習得および各種カラム透水実験によるバイオグラウトの土質工学的利用に関する検討を行った。まず、バイオグラウト(炭酸カルシウム)の生成量を高めるために、バイオリアクターを用いた高活性微生物の培養法を習得した。各種砂質試料を締め固めた供試体カラムを作製し、高活性微生物を用いたバイオグラウトのカラム生成実験を行った。十分な強度を得るために必要とされる炭酸カルシウム(カルサイト)量は土1kgあたり少なくとも0.21molといわれており、いずれの供試体においてもこの基準をおおむね満たす炭酸カルシウムの生成量が得られた。しかし、土粒子の比較的細かい細粒砂に分類される豊浦標準砂を用いたグラウト生成実験では、十分な炭酸カルシウム生成量が得られたものの供試体はほとんど固化されなかった。微細な土粒子間隙ではバクテリアの活性が低下することや、微細な土粒子表面とバイオグラウトとの結合性の低さが原因と考えられる。各種礫・砂の混合土によるバイオグラウト供試体に対する一面せん断試験では、バイオグラウト生成前に比べて強度の増加が確認できた。より高活性・高濃度の微生物を土中に注入することで、より多くのグラウトを生成させ、より高い強度発現が得られることが示された。
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