慢性疼痛におけるTRPM2の役割について、TRPM2-KOマウスを用いて各種慢性疼痛モデル動物を作製して疼痛反応を評価した結果、予想通り炎症性疼痛・神経障害性疼痛・糖尿病性神経障害モデルいずれにおいても痛み反応が減弱した。しかし、慢性疼痛モデルにおける脊髄内ミクログリアの活性化について免疫染色法で検討したところ、ミクログリアの活性化状態については大きな変化が見られなかったが、末梢組織におけるマクロファージや好中球の浸潤がTRPM2-KOマウスにおいて減少していた。さらに、各種炎症性サイトカインやケモカインの発現量について、real time PCR法やELISA法による検討を行ったところ、末梢組織においてはMIP-2産生量の減少が観察され、DRGおよび脊髄においては変化が見られなかった。 そこで現在は、末梢組織のマクロファージおよび好中球に注目して、慢性疼痛モデルにおけるTRPM2の役割の検討を続けている。これまでに、TRPM2-KOマウスに対してWTマウス由来のマクロファージを投与したところ、疼痛反応が惹起された。また、WTマウスに対してTRPM2-KOマウス由来のマクロファージを投与しても、疼痛反応は起こらなかった。このことから、現在はマクロファージからのサイトカインおよびケモカインの遊離量について、TRPM2-KOの影響を検討中である。 さらにこれまでに、DRG付脊髄スライスカルチャーを作製し、免疫染色法によってDRGニューロンおよび脊髄ニューロン、アストロサイト、ミクログリアといった各種細胞の生存を確認済みである。今後は、DRGに対する物理的な傷害や、炎症性サイトカイン処置等により、DRG付脊髄スライスカルチャーにおける中枢性感作モデルを作製する予定である。
|