1.シロイヌナズナの根において鉄吸収の長距離シグナルに制御される遺伝子群を明らかにした。 野生型シロイヌナズナを鉄が欠乏した培地で生育させて、地上部と地下部を鉄欠乏状態とした。地下部の局所的シグナルのみを活性化させるために、葉を切除することで地上部から送られる長距離シグナルを遮断した。また、地上部からの長距離シグナルのみを活性化させるために、地上部が鉄欠乏になるfrd3変異体を用いた。これらの生育条件を選定し、マイクロアレイ解析によって発現量の変動を調べた。その結果、長距離シグナルに制御される遺伝子と局所的シグナルに制御される遺伝子群を区別することに成功し、それら遺伝子の機能に明確な違いが認められた。この成果によって根における鉄吸収のための応答カスケードを解明する糸口がつかめた。現在、マイクロアレイの結果の再現性を確認する実験と、分類された遺伝子群についての詳細な解析を進行中である。 2.イネ・オオムギにも長距離シグナルが存在する。 根における鉄の吸収機構はイネ科とイネ科以外で大きく異なることが知られている。シロイヌナズナ以外の植物種としてイネとオオムギを用いて葉の切除実験を行って長距離シグナルの影響を調べた。その結果、シロイヌナズナと同様、いくつかの鉄吸収に関わる遺伝子が地上部から送られる長距離シグナルに制御されることが分かった。これらは、鉄吸収の長距離シグナル伝達が植物で広く保存される機構であり、その解明によって多くの植物の応用研究に役立つと期待される。
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