研究内容はウラジーミル・ナボコフの翻訳とバイリンガリズムの諸問題を考察することにある。目的はそれによって、現代社会において関心の高い問題であるバイリンガリズムや翻訳についての洞察を深めることにある。また、翻訳のみならず、応用発展的な問題としてナボコフの英語作品に含まれるロシア語的要素や、ロシア語作品に含まれる英語的要素などを考察することによって、世界文学としての言語芸術についても考察する。 本年度は、4月に比較文学会東京支部例会において「Self-translationとはなにか:ウラジーミル・ナボコフを中心に」という発表を行った。また、6月に大阪大学で行われる日本比較文学会の大会で、シンポジウム「複数言語で文学を考えるということ」でパネリストを勤め「ウラジーミル・ナボコフと「痛み」のバイリンガリズム」について発表した。8月からアメリカ、ウィスコンシン大学にわたって、honorary visiting fellowの身分で研究を継続中である。また、『群像』11月号において組まれた特集「知られざるナボコフ」にブライアン・ボイドの論考「ナボコフの遺産」の翻訳、および解説を掲載した。3月には京都で行われた国際ナボコフ学会のために一時帰国して、Nabokov's 'Natural Idiom' : From' First-rate' Russian to' Second-rate' Englishについて発表を行った。
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