研究概要 |
京都大学の安藤浩志氏と共同研究を行い,有限von Neumann代数のユニタリ群に対する無限次元Lie群論を展開した.すなわち,対応する自然なLie代数が完備位相Lie代数として存在することを示した.無限次元ユニタリ群上には自然な位相が二つあり,それぞれノルム位相,強作用素位相と呼ばれる.ノルム位相を考えた場合にはユニタリ群はBanach-Lie群と呼ばれる無限次元Lie群となり,扱いやすく,多くの研究がなされている.ところが,ノルム位相を考えると,熱場の量子論を含む量子論の理論や,時間作用素の理論で重要な非有界作用素が扱えない.そのため,非有界作用素を扱うには強作用素位相を考える必要があるのだが,強作用素位相を与えたユニタリ群に対する無限次元Lie群論は今まであまり成功しなかった.これは強作用素位相を考慮した無限時限ユニタリ群があまりにも大き過ぎるからである.我々はこの問題を,有限von Neumann代数のユニタリ群の場合に肯定的に解決した.また,関連して,有限von Neumann代数に付属する非有界作用素全体の成す代数について,その構造を詳しく調べた.証明の主な方針は,非可換積分論を適用することである.証明の過程で非有界作用素の自己共役性について理解が深まったことも意義深い.これらの結果について現在論文を執筆中であり,完成し次第雑誌に投稿する予定である.量子論や時間作用素の理論は,数学的にはLie代数の(非有界作用素)表現としてとらえられる.今後は上述の結果と熱場の量子論等,量子論との関係をより深く探っていきたい.
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