研究課題
本研究は、平成21年度において、以下のような研究を実施し、その過程を辿った。第一に、19世紀後半から20世紀前半の中東地域における第一次イスラーム復興期の間のスンナ派とシーア派の交流の実態を実証的に明らかにした。具体的には、イスラーム改革主義者のムハンマド・アブドゥとラシード・リダーが1890年代から1930年代にかけて共同執筆・編集した汎イスラーム的政治雑誌『マナール』(アラビア語)の分析を行い、同誌の標榜するスンナ派とシーア派の理念的関係、及び実際の人的交流を、関連史資料から浮き彫りにした。第二に、20世紀中葉の中東地域におけるナショナリズム期の間のスンナ派とシーア派の交流の実態を実証的に明らかにした。具体的には、1947年にエジプトのカイロに設立された「イスラーム諸学派近接館」が1940年代から60年代にかけて刊行した雑誌『イスラームの使信』(アラビア語)の解析を行い、同誌の標榜するスンナ派とシーア派の理念的関係、及び実際の人的交流を、スンナ派の最高学府アズハル大学がシーア派を正統学派として承認した58年のファトワーを含め、関連史資料より浮き彫りにした。以上から、表層におけるナショナリズムの下で看過されてきた深層におけるイスラーム運動とその広域ネットワークのありかを正確にすくいあげ、そこに見出されるスンナ派とシーア派の関係論を理論的に把握し、第一次イスラーム復興期のスンナ派とシーア派の関係論と接続することで、現代の汎イスラーム主義にいたるまでの通史的な見取り図を獲得することができた。
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Proceedings of International Workshop on "Conflicts, State-building, and Civil Society in the Muslim Societies"
ページ: 48-67
Kyoto Bulletin of Islamic Area Studies 2(2)
ページ: 25-32