これまでにBimolecular Fluorescence Complementation (BiFC)法で確認されたカイコ HP1とPiwiタンパク質の相互作用をInsect two-hybrid system (12H)を用いて追試した。その結果、BiFC法による解析の結果と同様にカイコHP1とPiwiの間に相互作用が認められた。また、RNAiを高効率で誘導できる培養細胞BmN4-SID1を用いて、カイコPiwiとHP1の相互作用の関係をRNAiと12Hを用いて解析したところ、カイコPiwiとHP1βの相互作用にはHP1αが必要であることが明らかとなった。さらに、piRNA顆粒の一つであるNuage様の顆粒構造中で確認されたAgo3-Siwiの相互作用および局在にpiRNA関連因子が関与しているか否かをpiRNA関連因子をノックダウンしたBmN4-SID1においてBiFC法によって解析した。その結果、Nuage関連因子と考えられるVLG、Tudor、Spindle-Eノックダウン細胞においてBmAgo3-Siwiの局在の乱れが確認されたが、他のpiRNA顆粒としてショウジョウバエで報告されているYb-bodyの構成因子のホモログであるカイコArmitageおよびYbはノックダウンを行なってもBmAgo3-siwiの局在に影響を与えなかった。さらに、抗 Yb 抗血清を用いて培養細胞BmN4の免疫染色を行なったところ、BmN4ではYbを含む顆粒は観察されなかった。したがって、BmN4にはYb-body様の構造体は存在しないと考えられる。これまでの結果より、BmN4においてはカイコPiwiタンパク質の多くは細胞質中に顆粒として存在するが、一部が核内でHP1との相互作用を介して染色体構造変換に関与し、それらのPiwiタンパク質がクロマチン構造を制御しているモデルが考えられる。
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