これまでの研究からToll-like receptor 3(TLR3)を介した樹状細胞への刺激が、Th1応答を強く誘導する事が知られており、細胞障害性T細胞(CTL)の誘導に重要なクロスプレゼンテーションも促進される事が明らかとなっている。 しかし、TLR3シグナルによるクロスプレゼンテーション制御機構については分かっていない。 そこで、TLR3-TICAM-1シグナルによって誘導されるクロスプレゼンテーション制御機構について、TLR3シグナルに関与する分子を欠損したマウスを用いて解析を行った。 In vivoにおいて、TLR3のアダプター分子であるTICAM-1/TRIF、またはIRF-3/7を欠損したマウスではpolyI:Cによる抗原特異的なT細胞の増殖が減少している事が明らかとなった。また、polyI:Cで刺激したマウスより樹状細胞を調製し、ex vivoで解析を行ったところ、樹状細胞によるクロスプレゼンテーションも減少している事が明らかとなり、polyI:CによるクロスプレゼンテーションにはTICAM-1および、IRF-3/7が重要である事が明らかとなった。 そこで、樹状細胞にpolyI:C刺激を行ったDNAマイクロアレイ解析からクロスプレゼンテーションに関与する分子の探索を行ったところ、TICAM-1依存的に誘導される遺伝子群に細胞内寄生細菌の除去に寄与するp47 GTPaseが見つかった。その一つであるIRG47を樹状細胞に過剰発現するとクロスプレゼンテーションが促進することが明らかとなった。また、IRG47はIRF-1によって転写制御される事が知られていることから、TLR3の下流で新たな転写因子としてIRF-1が機能するか検討を行った。In vitroの解析からTICAM-1はTIR領域を介してIRF-1と結合し、活性化する事が明らかとなった。以上の結果から、TLR3/TICAM-1シグナルにクロスプレゼンテーション制御には転写因子としてIRF-3/7が重要な役割を果たしている事が明らかとなり、TLR3の下流で新たにIRF-1活性化する経路が存在することが示唆された。
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