研究課題
これまでの研究からToll-like receptor 3 (TLR3)をした樹状細胞への刺激が、Th1応答を強く誘導する事が知られており、細胞障害性T細胞(CTL)の誘導に重要なクロスプレゼンテーションも促進される事が明らかとなっている。しかし、TLR3シグナルによるクロスプレゼンテーション制御機構については全く分かっていない。また、TLR3の合成リガンドであるpolyI:Cは細胞質内においてMDA-5によっても認識されI型IFNを産生する事から、MDA-5経路のクロスプレゼンテーションへの関与もあわせて検討を行った。TLR3のアダプター分子であるTICAM-1と、MDA-5のアダプター分子であるIPS-1の欠損マウスを用いて、in vivo, ex vivoにおいてクロスプレゼンテーションの評価を行った。PolyI:CとOvalbumin (OVA)を尾静脈に投与し、抗原特異的なT細胞の増殖および抗原特異的な細胞障害活性によってクロスプレゼンテーションを評価したところ、TICAM-1欠損マウスにおいて、顕著にT細胞の増殖および細胞障害活性の低下を認めた。また、IPS-1欠損マウスにおいても若干のT細胞の増殖、細胞障害活性の低下を認めたものの、TICAM-1欠損マウスよりも軽微であった。次に、polyI:Cを尾静脈投与したマウスより樹状細胞を調製し、ex vivoで解析を行った。IPS-1欠損マウスから調製した樹状細胞は抗原特異的T細胞を野生型と同程度増殖させたのに対し、TICAM-1欠損マウス由来の樹状細胞では、T細胞をほとんど増殖させず、IL-2の産生も誘導しなかった。また、脾臓由来樹状細胞サブセットのうち、CD8+DCのみ、T細胞の増殖を誘導した。これらのことから、polyI:Cを認識する二つのレセプターのアダプター分子のうちTICAM-1の方がIPS-1よりもクロスプレゼンテーションに重要である事が明らかとなった。
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