本研究課題においてはIL-6/STAT3シグナル伝達機構の解明を目的とし、タンパク質の転写翻訳後修飾の一つであるSUMO化修飾に着目し、IL-6によるタンパク質のSUMO化修飾への影響を解析した。 現在までに脱SUMO化修飾であるSENP1がIL-6刺激により発現誘導されることやSENP1がSTAT3の転写活性や標的遺伝子の誘導を抑制する事でIL-6/STAT3シグナル伝達系を負に制御すること、並びに、IL-6の有する抗アポトーシス活性や細胞増殖能に影響を与えることを見出した。 本年度は昨年度に続き、その分子メカニズムの解析に重点を置き、研究を進めた。研究をするにあたり、SENP1がSUMO化修飾を受ける代表的な核内タンパク質であるPMLを介してIL6/STAT3シグナル伝達系を制御していることが考えられた。そこでPMLがIL6/STAT3シグナル伝達に対してどのような影響を及ぼすかは未だ不明な点が多いため、まず、PMLによるIL-6シグナル伝達経路の制御メカニズムの解析を行った。その結果、PMLはSTAT3のリン酸化を減弱することおよびホスファターゼであるPP2AによるSTAT3の脱リン酸化やPP2AによるSTAT3転写活性抑制を正に制御することを明らかとした。これによりPMLはPP2AによるSTAT3脱リン酸化を増強することでSTAT3の転写活性を調節していることが示唆された。また、PMLはSTAT3の核移行や細胞増殖を調節していることが明らかとなった。更に、PMLのSUMO化修飾はPMLのSTAT3に対する負の作用を増強し、SENP1はそれを抑制することを明らかとした。以上の事よりSENP1がPMLのSTAT3に対する機能を調節することでIL-6/STAT3シグナル伝達系を制御することが示唆された。
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