研究課題
2010年3月末に重心系エネルギー7TeVでの陽子-陽子の衝突データの取得がLHC-ATLAS実験に於いて開始され、新物理の探索や標準模型の検証に向けてデータの蓄積を開始した。本年度はその実験初期の衝突データを用い、トップクォークの対生成断面積の測定を行った。トップクォークは生成後、即座にほぼ100%の確率でボトムクォークとWボソンに崩壊すると考えられている。その為、良いボトムクォークの供給源になり、本研究課題の遂行に於いて重要な役割を占めるボトムクォーク同定アルゴリズム(b-tagging)の性能の理解に重要となる。また、トップクォークは比較的実験初期に利用可能な粒子である、新物理探索時には主な背景事象になる等の理由から、その生成過程を理解することは重要な課題である。生成断面積測定には終状態に荷電レプトンを二つ含むモードを用いた。荷電レプトンは実験的には同定しやすい粒子であるため、元々信号対背景事象比(SN比)が良い。本研究では事象選別にb-taggingを用いることでSN比を更に高め、測定精度を上げることを考えた。また、実験初期に於けるb-taggingの性能を確認する意味でもb-taggingを用いることに意味があった。実際に測定するにあたり、b-tagging有り、無しの2通りの方法で測定を行った。b-taggingを用いることにより統計誤差の面では不利であるが、系統誤差を抑えることが出来るため測定精度はほぼ同等であった。このことは実験初期に於いてb-taggingが十分に有用であることを示すに足る結果であると考えている。また、この研究の過程でb-taggingアルゴリズムの理解が進んだため、研究課題遂行に向けて着実に準備が整っていると考えている。
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The European Physical Journal C
巻: 未定(掲載確定)
Physics Letters B
巻: Vol.688, Issue 1 ページ: 21-42
Physical Review Letters
巻: Vol.105, Issue 16