前年度から引き続き、トリエチニルホスフィン-金触媒を用いた7員環形成反応の検討を行った。シリルエノールエーテル部位を有するアルキンの7員環形成反応の反応条件及び基質適用範囲の詳細について詳細に検討を行った結果、以下のような事を見出した。まず、環状骨格を有した種々のシリルエノールエーテル基質の反応では7員環を含むビシクロ環化体を高収率で得ることができた。一方で環化がより困難とされていた直鎖状のシリルエノールエーテル基質も効果的に反応し、β-メチレンシクロヘプタン誘導体を高収率で与えることがわかった。本反応では、金触媒反応で通常良く用いられている配位子であるPPh_3やIPr、X-phos等を用いても効果的な環化が起こらなく、トリエチニルホスフィン配位子の有用性を示すことができた。また、この結果をアメリカ化学会のOrganic Lettersにて論文報告した。また、トリエチニルホスフィン-金触媒がアルキン部位を有するスルホンアミドの分子内ヒドロアミノ化にも効果的であることを見出した。これにより、含窒素7員環化合物であるアゼピン類縁体を広く合成することに成功した。アゼピン類は、その骨格が様々な天然物、有用な薬中に含まれることから、本反応が効率的な合成手法の一つになることが期待される。現在、これらの成果の論文投稿が準備段階にある。また、この反応を利用した天然物の全合成を立案し、現在合成検討中である。
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