性転換個体の遺伝的な性を判別するためのW染色体特異的分子マーカーを作製するため、雌雄個体から抽出したゲノムDNAを20数種類の制限酵素で消化し、電気泳動で検出された雌特異的な反復配列のクローニングを行った。しかし、W染色体特異的分子マーカーを作製することができなかった。そこで、雌雄のゲノムDNAをテンプレートとして使用しランダムプライマーを用いてPCRを行うRAPD解析を行い、アクリルアミドゲルを用いた電気泳動により、メス特異的に検出されたDNAバンドからW特異的なフラグメントのクローニングを試みた。300通りのプライマーの組み合わせを行ったが、この実験でもメス特異的なバンドを検出することができなかった。次に、本研究での発現解析のためにクローニングした、性分化関連遺伝子のサンショウウオホモログの染色体マッピングを行うことで、エゾサンショウウオの性染色体連鎖遺伝子を同定し、その遺伝子のZ染色体連鎖ホモログとW染色体連鎖ホモログの塩基配列を詳細に解析することで、新たな性判別マーカーを作製することができるのではないかと考えた。しかしながら、単離されたすべての性分化関連遺伝子はエゾサンショウウオでは常染色体にマップし、性染色体連鎖遺伝子を同定することができなかった。 今後はまだ単離していない性分化関連遺伝子などの機能遺伝子のサンショウウオホモログのクローニング・染色体マッピングを行い、新たな性連鎖遺伝子を同定することで、性判別マーカーの作製を試みている。しかしながら、サンショウウオの染色体標本は非常に難しく、現在の方法では良好な染色体標本を数多く得ることが困難である。したがって、今後は染色体標本作製における細胞培養方法を新たに確立する必要がある。
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