研究概要 |
昨年に引き続き,オートファジーにおけるE1酵素である酵母Atg7の構造解析可能な分解能の結晶が得られる条件をスクリーニングした.その結果,高エネルギー加速器研究機構のビームラインにおいて、最大分解能3Aのデータを収集することに成功した.構造解析のための位相決定は分子中に含まれる硫黄原子を利用し,Zn-SADによって決定した.決定したAtg7の構造はN末端とC末端にそれぞれドメイン構造を有しており,C末端ドメインは従来のE1酵素に共通して存在するadenylation domainによく似た構造であったが,N末端ドメインは既知の構造ドメインとは相同性のみられない新規構造ドメインであることが判明した. 得られた構造情報からAtg7のドメイン境界を再定義し,N末端ドメインはE2酵素であるAtg3とC末端ドメインはユビキチン様タンパク質であるAtg8とそれぞれ結合能を有していることを明らかにした.さらにAtg7 C末端ドメインとAtg8との共結晶化を行ない,Atg7C-Atg8複合体の立体構造を明らかにすることに成功した. これらの情報からAtg7はAtg8の認識,さらにAtg3の認識およびAtg3へのAtg8受け渡しの分子メカニズムがこれまで構造既知のE1酵素とは大きく異なっていることが予想される.この成果は構造生物学的に大きなインパクトであるとともに,オートファジー関連タンパク質に特徴的な構造情報は,のちのオートファジー阻害剤研究にも大いに役立つものと考えられる.
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