1.ナノクラスターの固体壁面衝突 (1)具体的内容:ナノクラスターが固体壁面に衝突する現象を数値シミュレーションで再現し、ナノクラスターの破壊および吸着状態を解析した。入射速度がある臨界値を上回った場合にナノクラスターは破壊され、その臨界値を理論的に見積ることに成功した。衝突後のナノクラスターは壁面に吸着して膜を生成するが、膜の厚さも入射速度に強い依存性を持っており、系のエネルギーバランスの考察によって各入射速度に対する膜の厚みも予測することができた。 (2)意義および重要性:これらの結果はナノデバイスなどの応用面において、基盤上の薄膜形成のプロセスに際して重要な情報を提供できると期待される。これらの結果は昨年7月のFOMMS 2009で報告され、昨年11月に発表論文として出版された。 2.グラフェンへの応用 (1)具体的内容:次世代ナノ材料として期待されているグラフェンに対する衝突も数値シミュレーションで再現し、衝突の衝撃によってグラフェン内に弾性波が生じることを確認し、弾性論を用いてこれを説明した。 (2)意義および重要性:グラフェンの厚みに関しては様々な議論が成されているが、我々の結果によって従来の0.34nmよりもはるかに薄い0.087nmという説が適切であることが解った。これらの結果は昨年9月に熊本大学で行われた日本物理学会で口頭発表され、今年3月に米国の学術雑誌に発表論文として出版されることが決定した。 3.ナノクラスター同士の衝突 (1)具体的内容:ロシアと英国の共同研究者と共に、ナノクラスター同士の斜め衝突に関する研究を遂行しており、負の跳ね返り係数を観測し、跳ね返り係数を弾性体モデルによって説明することに成功している。 (2)意義および重要性:ナノクラスターの衝突に見られる負の跳ね返り係数は、従来の古典的な運動論に重大な課題を提示するものであり、来年度始めには発表論文として投稿する予定である。
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