1.ナノクラスター同士の斜め衝突における負の跳ね返り係数 受入研究者である早川尚男教授とA.Bodrova氏およびN.Brilliantov教授らと共にナノクラスター同士の斜め衝突の数値シミュレーションと理論解析を行った。分子動力学シミュレーションにより、引力相互作用がスクリーニングされたナノクラスターや表面を水素原子でコーティングされたシリコンナノクラスター同士の斜め衝突を再現し、ある入射角以上では跳ね返り係数が負になるという結果を得た。ナノクラスターの負の跳ね返り係数は接触面の回転効果を考慮することで説明することができ、マクロな散逸粒子同士の衝突で用いられる粘弾性体モデルを使い、入射角度に対する跳ね返り係数の振る舞いを定量的に説明することができた。また、表面を水素原子でコーティングされたシリコンナノクラスター同士の斜め衝突においては、法線方向の変位のダイナミクスまでほぼ定量的に説明することに成功している。本研究成果は今年度の11月にアメリカの学術雑誌Physical Review Lettersに掲載され、Editors' Suggestionsに選ばれるなど、高い評価を得ている。 2.粉体せん断流の弱非線形解析 今年度の初めから現在にかけては、2次元の粉体せん断流の弱非線形解析に取り組んでいる。本年度の1月以降は本課題に専念している。特に、Hydrodynamic limitにおける理論計算を注意深く進めており、線形安定性解析に関しては一通りの成果を上げている。今後は弱非線形解析での様々な矛盾点を追及し、学術雑誌Granular Matterに投稿する予定である。
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