本年度は機能的なzinc finger nuclease(ZFN)の作製法の確立を行い、ウニ胚におけるZFNを利用した遺伝子ターゲティング技術を確立する目的で以下の通り研究を実施した。ZFNはDNA塩基配列を認識するzinc fingerドメインとヌクレーゼドメインからなる人工タンパク質で、任意の配列を認識するzinc fingerを利用することで、任意のDNA塩基配列領域へDNA二本鎖切断(DSB)の導入が可能である。DSBは細胞内ですぐさま修復されるが、非相同末端連結修復によって修復されると高確率で挿入や欠失が導入される。そのため、遺伝子のタンパク質情報コード領域を標的とするZFNを作製することで特定遺伝子機能の破壊が可能である。本研究ではone-hybridシステムとsingle-Strand annealingアッセイを組み合わせることで効率よく機能的なZFNを作製することに成功した。ウニ胚でZFNを利用した遺伝子操作が可能かどうかを確かめる目的で、ウニの初期発生過程で発現する転写因子遺伝子HesCを標的とするZFNを作製した。HesC遺伝子を標的とするZFNのmRNAを作製してウニ胚へ打ち込んだところ、モルフォリノアンチセンスオリゴによるHesCノックダウン胚と同様の形質を示す胚が現れた。またHesC ZFN mRNAインジェクション胚からゲノムDNAを回収し、HesC ZFN標的配列周辺の塩基配列を決定したところ、およそ28%のサンプルで標的配列に突然変異が導入されていたことを確認した。これらの結果から、選抜したZFNを利用したウニ胚での遺伝子ターゲティング技術の確立に成功したと考えられる。今後はZFNを利用し、ウニ胚において特定遺伝子座にレポーター遺伝子を挿入する技術を開発し、内在遺伝子の発現ダイナミクスを生体内で経時的に定量化する予定である。
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