研究概要 |
ユークリッド空間上の有限集合で,互いに異なる2つの元のユークリッド距離の種類の個数がsであるものをs距離集合と呼ぶ。次元とsを固定したときに,元の個数の最大値を決定することが,s距離集合の主な問題の一つである。 元の個数を大きくすると,距離に何らかの制限がつき,自由度が小さくなっていくことに気づく。その制限をどう数学的に記述できるかが,大きな問題の一つであった。sが2であるとき,Larman-Rogers-Seidelは距離の二乗比が整数比(k:k-1)になることを1977年に示している。それが良い制限になり,2距離集合は大きな進展を見せてきた。sが3以上であるとき,ラーマンたちの比の拡張が望まれていたが,30年以上進展を見せず,その比がどうなるかという予想も明確になっていない状況だった。 21年度の大きな進展は,このラーマンたちの比の拡張を,sが全ての場合において,非常に簡明な証明と共に与えたことである。また,その比は次元に依存する関数により抑えられる。 この拡張を用いて,いくつかの応用に成功した。 球面上の距離集合について,デルサルトの線形計画法による上界と,私が示した既存の上界を改善する上界,そして,今回のラーマンたちの定理の拡張により,sが3のときの元の個数の上界を改善した。特に次元が8のとき,その最大値が120であることを決定した。 2つ目の応用として,アソシエーションスキームとの関連を調べた。クラスsのアソシエーションスキームはs距離集合として球面に埋め込める。Q多項式アソシエーションスキームについて,その埋め込みに対する今回与えた比が,その指標表から容易に読み取れることが分かった。また逆にその比が読み取れることがアソシエーションスキームがQ多項式となる条件である。球面の議論からQ多項式アソシエーションスキームの本質に迫る成果を上げることが出来た。
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