今年度実現した研究は以下の通りである。 まず、発展途上国で直面している水道問題を理解するために、カンボジアのプノンペン市周辺でヒヤリングやアンケート調査で集まったデータを用いて一つの論文をまとめた。水道需要における所得弾力性や価格弾力性などを推計し、将来水道サービスを拡大するとき、利用者に対してどのぐらい厚生を高めることができるか検討した。カンボジアではサービスの普及率が拡大することによって、水道利用状況の改善やインフラ整備に対する料金設定の必要性があることなどを明らかにした。 日本水道事業運営について、効率性と生産性の要因分析や水道事業の最適な規模等について3本の論文をまとめた。1本目は環境変数がどのように運営効率性に影響するか検討する目的である。2005年の392水道事業のデータを用いて、効率性を推計し、要因分析をした結果、水道利用者所得の地域格差は水道事業運営に影響を与えず、耐震化施設の割合は正の関係があると分かった。耐震化施設の拡大が水道事業にとって大切だとわかる。また、イギリスやオランダなどいくつかの国の水道事業と比べて、日本の水道事業は数が多くて規模が小さい現状である。そこで、2本目の論文は水道事業がどのぐらいの規模であればいいか検定する目的である。日本の1999年~2008年までの831事業者のパネルデータを用いて、最適な規模を検定し、その結果、8万5千人程度の利用者数が日本の水道事業の最適な規模だとわかる。現在供給している水道規模がそれより小さいので、将来広域化なども進むべきだといえるだろう。最後に、従来型委託は水道事業の運営の生産性にどのように影響を与えるか検討する論文である。日本の2000年~2008年までの816データを用いて推計した結果、従来型委託は水道事業の生産性に影響を与えないとわかる。将来、外部委託をするときに、やり方として改善すべき余地もまだあると思われる。
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