研究概要 |
今年度は主にAGT予想について研究を行った. AGT予想とは,Nekrasov分配函数と呼ばれる射影曲面上の枠付き連接層のモジュライ空間から定義される函数と,Virasom代数のコンフォーマル・ブロックが一致するという予想である.前者は代数幾何,後者は量子代数の表現論と関係する. AGT予想の退化版においては,表現論サイドで現れる対象はWhittakerベクトルと呼ばれるVirasoro代数のVerma加群の特別な元である。昨年度末からの研究で,Jack対称多項式を用いてWhittakerベクトルを明示化した.これについて論支を雑誌Journal of Algebraに投稿した.論文は今年度受理され,2011年内に出版予定である. また,この退化版の証明にはZamolodchikov型の漸化式が大切な役割を果たす.この漸化式の精密な取り扱いについてプレプリントを書き,論文誌に投稿した. AGT予想にはK理論版と呼ばれる類似もある.この場合についてもZamolodchikov型の漸化式が成立することが予想される.K理論的Nekrasov分配関数についてこの漸化式を証明し,雑誌Journall of Mathematical Physicsに論文を投稿した.論文は今年度出版された. 最後にDing-Iohara代数について述べる.これについては昨年度から白石潤一(東京大),墨野歩(上智大),ボーリャ・フェイギン(モスクワ自由大学)らと共同研究を続行している. 昨年度末にDing-Iohara代数と変形W代数との関連を調べ,数理解析研究所講究録に論説を出した.現在,K理論的AGT予想とDing-Iohara代数との関連を研究中である.
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