電気推進やソーラーセイルなどの微小加速度推進装置はより少ない燃料で目的地にたどり着くことができるため、将来の深宇宙探査においてより一層の活躍が期待される。しかしながら、このような微小加速度を発生させながらの軌道決定技術はまだ確立できていない。現在の軌道決定では、巡航フェーズにおける十分な決定精度を得られておらず、クリティカルフェーズでは微小加速度推進装置を切る必要があり、その性能を十分に活かしきれていない. 本研究では電気推進やソーラーセイルなどの微小加速度を考慮した精密軌道決定技術を確立し、巡航フェーズ運用に耐えうる軌道決定精度を達成する。そして、クリティカルフェーズにおいても、電気推進やソーラーセイルを使用できるようにすることを最終目的とする。具体的には軌道決定のための詳細な電気推進、ソーラーセイルのモデルを構築することで、軌道決定精度やその信頼性を高める。 本年度は主に小型ソーラー電力セイル実証機IKAROSのシミュレーションと軌道追跡データを用いた太陽輻射圧推定を行った。この人工衛星は2010年5月に打ち上げられ、6月にその大型膜面の展開に成功し、太陽輻射圧による加速を開始した。その太陽輻射圧を軌道追跡データで推定し、昨年度構築したソーラーセイルのモデルを評価した。ソーラーセイルの加速度は太陽距離と太陽に対するソーラーセイルの姿勢によって変化するが、構築したモデルが、実データにフィッティングされることができた。ただし、セイルのスピン軸と地球方向がなす角が90度近くなると、セイルの加速度の観測性が悪くなり、精度が悪くなる。この成果は2回の国際会議で発表している。
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