研究概要 |
超弦はghost数の他にpicture数と呼ばれる量子数を持つが,このpicture数の選び方には任意性がある.また,開いた超弦には,ボソンを表すNeveu-Schwarz(NS)場とフェルミオンを表すRamomd(R)場という二つの部分があり,通常(第一量子化された理論)の場合,(NS,R)場のpictureは(-1,-1/2)に選ぶ.しかしながら,超弦の場の理論(第二量子化された理論)を考える場合,現在知られている整合的な理論ではNS場のpictureを0に選ぶ必要がある. a)0-pictureの物理的状態 picture数を変化させる演算子はpicture changing operator(PCO)と呼ばれる.0-pictureの状態は(-1)pictureの状態にPCOを作用させることで生成されると考えられているが,PCOはカーネルを持つ(作用させると消えてしまう状態がある)ため,0-pictureのHilbert空間の構造はこれまで明らかにされてこなかった.そこで我々は,BRST代数とその四重項機構の方法を用いて0-pictureにおける物理的状態を具体的に構成し,no-ghost定理(負の確率振幅を持つ状態,つまりゴースト,が物理的モードに現れないこと)を証明した. b)相似変換を用いたno-ghost定理の証明 さらに,上記のno-ghost定理の証明を,相似変換を用いて簡略化した.BRST量子化の方法を用いる場合,物理的状態はBRST演算子のcohomologyで与えられるが,相似変換を用いてより簡単な構造を持つ空間へと写像することにより,物理的状態の構成とno-ghost定理の証明を簡潔に書き直すことができる.また,相似変換を用いた方法は任意のpicture数の場合に応用することができる. c)Ramond場への相似変換の応用 相似変換をRamond場のno-ghost定理に応用することで,その証明を簡略化することができると考えられる.ただし,Ramond場の場合の相似変換はNS場に比べて複雑で,具体的な形を求めることは容易ではなく,この研究は現在進展中である.
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